近年盛り上がりを見せるフォーマット、レガシーはその金額的ハードルもあってプレイヤーの多くは古参勢だ。ここ大分県でも筆者がMTGを始めるよりもはるか昔から多くの人に親しまれている。
そんな歴戦の兵達が一堂に会する草の根レガシー大会が、かつては月3回以上のペースで開催されていたことからもこの土地におけるレガシー熱の高さをおわかりいただけるだろう。

しかし時代は向かい風、コロナ禍に伴い草の根大会の開催頻度は大きく減少した。大分県のレガシープレイヤーは主に中心地である大分・別府市のプレイヤーと、県北は中津・宇佐在住者の人口が大半を占めているのだが、我々がレガシーでしのぎを削り合う機会は殆どなくなってしまったといっていいだろう。
密を避ける都合や仕事の立場的な都合はもちろん、大会を開催すること自体への抵抗感…コロナ禍に伴うテーブルトップマジックへの閉塞間は膨らんでいくばかりだ。

そんな中、数少ない月例レガシー大会として機能しているのがこの「大分レガシー」だ。かつては他の草の根大会同様公共施設を借り受けての開催を基本としていたため現在そこからの撤退を余儀なくされるも、主催者のレガシーに対する熱意、そして開催店舗として会場を提供していただいているレアルトマト別府店の厚意もあって継続的な開催が実現している。無論参加人数制限等の規模縮小、マスク・アルコール消毒等の感染対策徹底の上でと制約は非常に多い。
こういった制約の煩わしさを乗り越えての開催について、主催者ロノムJr.氏の熱意と行動力、そしてこの時節にも関わらず大会への多大な協力をしてくださっているレアルトマト別府店の両者にこの場を借りて敬意を表すると共に多大なる感謝を申し上げたい。


さて、そんな熱意の具現化のような大会で今回ガバレッジとして取り上げるのは準決勝注目のカード。


まずご紹介するのは期待の新人こと、ハンドルネーム「とり天」だ。
レアルトマト中央店を中心に活動する若きTCGプレイヤーだが、レガシー参入からは日が浅い。使用デッキは漢の「赤単バーン」
金銭的ハードルも絡んでいないわけではないが、デッキ選択の理由は本人の大いなる信仰と確信に基づくところが大きいようだ。スタンダードを始めとする他フォーマットにおいても、赤を中心色とする攻め気の強いデッキをよく使用していることからもこれが伺える。

フェア寄りのデッキでは経験が浅いと勝ち進むことが難しいとされるのがレガシーの通説だが、今回彼の予選成績は3-0-2から予選1位通過と非常に好調。
予選ラウンドではここまで通算成績で勝率0%であったらしい宿敵サカイ、もとい筆者も下している他、諸事情によってSE1は不戦勝にてベスト4に駒を進めているなど正に運否天賦が彼に味方する破竹の勢いだ。主催者であるロノムJr.氏との総合的な対戦成績も良好らしく、畏怖を込めた「ボルケーノとり天」という異名(?)を授かっている。
シングルエリミネーション込のレガシー大会でのTOP8進出は初の快挙であり、さらなる飛躍に彼自身意気込みは充分のようだ。


これを迎え撃つのは、冒頭で述べた「歴戦の兵」と称するにふさわしい戦歴を有する実力者、ハンドルネーム「ナリア」だ。
卓越したデルバーデッキの使い手であり、主催者曰くその実力は「達人級(マスタークラス)」。時代に合わせてアップデートされてきた古今東西様々なバリエーションのデルバーデッキを使いこなす、いうなれば師範代的存在だ。
今回使用するのは勿論トップメタである「RUGデルバー」。「半年近く紙の大会に出ておらず感覚が鈍っていて・・・」とは本人の談だが、今大会でもスイスラウンドを5位通過しきっちりとベスト4まで駒を進めている。回す時間が足りていなかったというデッキ自体も、ミラーやコントロール戦を意識してか本来ならサイドボードに搭載されがちなカードのメインピン採用が光る玄人好みの調整。その練達ぶりに衰えは伺えない。EXP版で統一されたフェッチランド含め、所謂「フルFoil」で固められた値段的にも見た目的にも高額なデッキから感じられるこだわり・インパクト共に非常に強い。

注目のカードだが実は予選ラウンドで既に一戦を交えており、その際はとり天に軍配が上がっている。
「リベンジさせてもらいます」とやり返す気概を静かに燃やすナリアに対し、「勝ちてぇ~」とただ勝利への渇望をただ丸出しにするのみのとり天。

新進気鋭の若武者と熟練の実力者、対決の幕が上がる。


●G1

先行はスイス順位が上のとり天。
《乾燥台地》⇛《山》から《ゴブリンの先達》で口火を切る好スタート。ナリアのトップからはおよそ不要牌である《不毛の大地》をめくる。返すナリアは《溢れかえる岸辺》から《Volcanic Island》をサーチしメイン《稲妻》でガイドを対処。あふれる手札のディスカードを避ける。
続くとり天の2ターン目、《山》を追加すると《僧院の速槍》、更に《ゴブリンの先達》おかわり!
バーンらしからぬ肉肉しい立ち上がりに、ナリアは悲鳴を上げる。小考した後やはりこのクロックは焼ききれないと踏んだか、やむなく《意志の力》を切ってガイドを打ち消す。
速槍のアタックが通り迎えるナリアの2ターン目、さらなるメイン《稲妻》で速槍のパンプアップを避けて焼きつつ見えていた《不毛の大地》を置いてエンド宣言。
どうやら2枚目の色マナを引き込めていないようだ。

こうなると畳み掛けたいとり天、3枚目の《山》を置くと残る手札を全て吐き出す一気呵成の攻勢に出る。
その内容は《渋面の溶岩使い》に《稲妻の連鎖》✕2!
流石のプレッシャーにさしもの熟練者ナリアも唸りを上げるが、これを処理する手段は不毛しかマナの立っていない彼にはもとより不可能。
一気に残りライフは二桁を割って9となり、ナリアには苦しい展開。3ターン目を受けてメインで《渦まく知識》。しかし悲しいかな、ナリアは沈鬱とした表情でトップに2枚カードを戻し、追加する土地はやはりフェッチではなく《不毛の大地》。手札の整理が思うようにいかない。

リソースを全て使い切ったとり天だが、ターンを受けて《渋面の溶岩使い》がアクティブに。墓地リソースも潤沢だ。ひとまず何もせずにターンを返す。
このターン、知っているトップをドローする運命にあるナリアの4ターン目も同じくドローゴー宣言。
相手のエンド宣言を聞くなり、とり天はラヴァマンサーを起動。それにスタックしてナリアは《稲妻》。戦場は一応空っぽになるものの、能力は解決されナリアの残りライフは7、バーン相手にはかなりデッドラインに近いと言える。
未だ色マナの出る土地がボルカ1枚のナリアには厳しい状況だ。

5ターン目のとり天は《血染めのぬかるみ》を置いて速やかにエンド宣言。後はトップから火力を引いてくるだけと言わんばかり。
ターンを受けたナリアの行動は2度目のメイン《渦まく知識》…だがここでとり天が掌で待ったをかけると、おもむろに自身の山2枚を墓地へと投げ捨てる。

飛び出したのはレガシーにおけるバーンの代名詞、《火炎破》!!

ますます顔をしかめるナリアだが、回答を求めてブレストをしている以上現状の手札に回答があるわけもなく諦観と共に4点本体を受けいれ残りライフは3に。
そして泣きっ面に蜂とばかりにこのブレストでもフェッチランドを引き込めずターン終了。

3点火力を引けさえすればほぼほぼ勝ちといえるとり天はエンド時にフェッチを切ると「お願いします!」と気合たっぷりにナリアへ自身のデッキカットを求める。緊張の一瞬、軽くデッキをカットしてデッキを返すナリア。

「ふんっ」と力を込めたとり天のドローは…《山》。
ひとまず生き延びるが、状況が一方的なことに変わりはない。ましてやナリアが返しにドローするのはやはりわかっているカードだ。
祈るように《秘密を掘り下げるもの》を戦線に追加しエンドするに終わってしまう。

そしてとり天に与えられた2度目のドローの機会。
トップから叩きつけられたのは3点火力…ではなく、《大歓楽の幻霊》!!
レガシーにおいてこのカードのペナルティダメージから逃れられる術はそう多くはない、ましてナリアのライフは3だ。これを打ち消せない以上、事実上の死刑宣告である。

ナリアは最後のあがきで返すターン2点を受けつつ《秘密を掘り下げるもの》を追加するが、残りライフは1。
そして、ラストターンとり天のドローは無情にも《焼尽の猛火》。
上陸はしていないが1点で充分。潔くナリアは土地を畳んだ。

とり天 WIN!!


マナトラブルにつけ込んだ面が大きかったとはいえ、開始3ターンで手札を全て使い切る見事な猛攻を見せたとり天。
しかし勝ったもののトップに賭けての立ち回りが危なっかしく感じたのか、サイドボード中も「いや~すぐ息切れするなあ」とぼやいて完全勝利への貪欲な姿勢を見せる。
息切れしないバーンってなんだ、ディグクルーズでも積んでんのか。


●G2

先行はナリアから。
《Volcanic Island》から《思案》の立ち上がり。相手がアグレッシブなデッキな以上、デルバーデッキといえど受け気味に立ち回るつもりだろうか。
3枚見てからの選択はシャッフルドロー。目当てのサイドカードがみつからないのか、あるいはランドを探しているのか。

対するとり天はサイド後もやることは変わらない、《血染めのぬかるみ》から《山》、《僧院の速槍》を走らせるスタートだ。
ナリアの2ターン目、まずは冷静に《稲妻》で速槍を焼き払うと2枚目の土地を…置かない。今度はマナスクリューのようだ。1戦目に続き、マナトラブルに見舞われる。

当然攻勢を緩めたくないとり天、速槍は失ったが《溶岩の打ち込み》を2連射し6点を削る。除去がなければ大量ダメージを目論んでいたようだ。
返すナリアの3ターン目。やはり土地は引けずドローゴー。万事休すか。

とり天は《大歓楽の幻霊》を繰り出し締め上げを図る・・・が、あいにく土地がないだけにナリアの手札は潤沢だ。即座に2点をもらいつつの《稲妻》で退場する。このターンはとり天も土地を置くことなくターンエンド。お互いランドストップの様相だ。

しかし4ターン目、ついにナリアが土地を引き込む。
《霧深い雨林》から《Tropical Island》をサーチすると、《戦慄集の秘技術師》を送り出した。墓地のスペルは《稲妻》に《思案》。
返すとり天はなんとかこれを除去したいところだが、やはり3枚目のランドを置けない。小考した後、2体目の《大歓楽の幻霊》を置いて少しでもアルカニストのアタックを咎めにかかる体制だ。

ナリアの5ターン目、すぐさまアルカニストをアタックに向かわせ墓地から《稲妻》。2点をもらいつつ大歓楽を焼き払う。
そしてついに3枚目の土地をセット、満を持して登場するのは《王冠泥棒、オーコ》
最早説明不要のパワーカード。食物による3点ゲインに加え、6の忠誠度と赤単にとっては悪夢でしかない。

早急な対処が求められるとり天、こころなしか慌てた動作でターンを受けると《稲妻の連鎖》⇛《稲妻》とナリアのライフ6点をかっ攫い、残りライフは2。
そしてためらうことなく山二枚を投げ捨ててとどめの《火炎破》!!!

が、しかしそこはピッチスペルの殿堂レガシーである。
ナリアも「流石にね」と虎の子《意志の力》(ジャッジ報奨版)を切ってこれを打ち消した。ライフは残り1、届かない。

そしてこの攻防で土地を失ったとり天に、MTGの歴史上最強のPWであるオーコに抗う術は勿論残されてなどいなかった。

ナリア WIN!!


土地を切り捨てたプレイングに「早かったか~」と項垂れるとり天。
土地をもう一枚引くまで待つかという2択だったようだ。実際彼も後手でランドストップしていた都合手札はそれなりに持っており、勝負を急いたのが裏目になった形だ。しかし、オーコによるゲインが見えていた以上2ターン待てるかというのはかなり怪しいところ。あのターンに賭けなければ、という考えも理解はできる。ここはきちんとWillを握っていたナリアを褒めるべきだろう。
かくして決着はG3へと持ち越された。


●G3

お互い7枚キープ、先手は再びとり天。
早速《山》から《ゴブリンの先達》の好発進でゲームを開始する。
ナリアのライブラリーからめくられた《稲妻の連鎖》。ひとまずガイドの処理については目処がたったことになる。

ターンを受けるナリア、ひとまずは《沸騰する小湖》を置いてターンを返す。
ガイドが土地をめくることを期待したのか、あるいはチェンライの温存か。

とり天の2ターン目、わずかに悩んだものの土地を置くことなく2体目の《ゴブリンの先達》を送り出した。「おおっと…」と流石に身体を揺らすナリア。
ひとまずはこれが通り、ガイド2体のアタックに誘発が2回。

一回目の誘発は《わめき騒ぐマンドリル》、最序盤の今は不要牌だ。解決次第すぐにナリアはフェッチを切ってトップをリフレッシュする。
続けて二回目の誘発。今度は《Tropical Island》、土地だ。手札に加わる。
そして流石に4点のダメージは看過できないと、持ってきたボルカから《稲妻》を放ちガイドの片方を処理。最低限のリスクから、最大値のリターンを狙う丁寧なプレイングだ。
対するとり天はそのままターンエンド。やはり土地は置かなかったのではなく、置けなかったようだ。G1・G2とマナトラブルに貧していたナリアとは立場が逆転した。

返すナリアのターン、まずはガイドに貰ったトロピーから《思案》。並べ替えてドローし、そのままGO。

3ターン目、やはり土地を引けず唸るとり天。
1マナしかない中慎重に選択した手札から、《僧院の速槍》を送り出す。
…が、「マナトラブルにつけ込む」という点においてはデルバーもレガシーにおいてはトップクラスのデッキ。
寝かせていたトロピーを戻しての《目くらまし》が炸裂し、ただでさえ苦しいとり天のアクションを無力化する。続くガイドのアタックにも、誘発でしっかりと土地を貰ってから《稲妻》の前に散る。最早ナリアの掌の上だ。

さら地となって余裕を持ってターンを迎えるナリア、貰ったフェッチを置いて《思案》から手札を整えエンド。
ターンを重ねてもなお土地を引けないとり天、《稲妻の連鎖》でライフを削るに終わる。アクションが狭い。

そしてナリアの4ターン目、フェッチを切って登場する悪夢再び。

《王冠泥棒、オーコ》!!

追い詰められたとり天、「土地~!」と祈りつつドローして手札をめくるがやはり土地は来ない。スイス通して好調だったデッキの回りもここにきて鈍ったか。
その後も細々と1マナのスペルを送り込むとり天だったが、潤沢なカウンターの前に沈み、後は戦場を埋め尽くす鹿達に踏み潰されるのみだ。

レガシーは引けぬ弱者に優しくはない。
項垂れるとり天に突きつけられたのは敗北の事実のみであった。

ナリア WIN!!


3ゲーム通して、マナトラブルとそれを突く/突かれるが命題となった比較的窮屈なゲーム展開。土地の枚数が極端に少ないレガシーのフェアデッキ同士ならではともいえるが、やはりマナスクや色事故はこのゲームをプレイする上で付き纏うジレンマだ。

勝敗を分けたのはマナトラブルに陥っても諦めず、そして勝負どころを冷静に見極めたナリアの熟練の大局観といったところか。「達人級(マスタークラス)」の称号は伊達ではない。
今後も大分レガシー大会における一つの壁となって立ちはだかることになるだろう。

善戦こそしたものの惜しくも破れたとり天だが、後に同じくSE2没となった主催者ロノムJr.氏から「ベスト4止まりの俺たちにはこのカードくらいが丁度いい…」という賛辞(?)と共に賞品の《思考囲い》が贈られた。
本人も悔しさ相まってレガシー更なるモチベーションを高めているようだ。
こちらも今後の活躍に期待しよう。

                   (筆:シャークジェスカイサカイ)

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